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「つもり贈与」に要注意!!

親の世代から子や孫の世代に相続時ではなく、生前に財産を上手に渡す方法として、贈与する方法があります。しかし「贈与したつもり」だったのに、相続時に贈与とは認められず相続財産とされてしまうケースがよくあります。

贈与税の非課税枠内で生前贈与されたつもりでも相続財産に

親から生前贈与された子供名義の預貯金が、親が亡くなって相続が発生した際に相続財産とされた事例があります。(下の事例参照)

この事例のようなケースはAさん自身の預金とみなされ、相続税の課税対象になる相続財産とされます。

事例

Aさんは、子供のBさんに贈与税の非課税枠(基礎控除額:110万円)以内で、毎年、Bさん名義による定期預貯金として贈与していました。ところがAさんが亡くなり相続税の申告後に行われた税務調査で「これは生前贈与ではなく相続財産」されました。Bさんは裁判に訴えましたが、以下の理由から地裁判決は「相続財産」と認定されました。

  • Aさんは子Bさんに通帳の届出印は渡していたが、通帳はAさんが保管していた。
  • 預貯金等を贈与する旨の契約書が作成されていない。(口約束はあったが)
  • Aさんは必要に応じて預貯金の一部を解約し使用していた。 など

生前贈与と認められる条件は?

贈与について、民法では「当事者の一方が自己の財産を相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって成立する」とされています。したがって、一方的な意思表示のみで成立するものではなく、当事者間の契約があってはじめて有効になります。

税務調査等で、生前贈与した事実を証明できるように以下の点に注意することが必要です。

注意点(1) 贈与の都度、贈与契約書を作成する

口約束でも契約したことになりますが証拠にはなりません。当事者双方に「財産を上げます」「財産をもらいます」といった意思があったことを証明するためには、書面(贈与契約書)を残しておくことが大切です。

注意点(2) 通帳や印鑑、カードの管理は贈与を受けた本人が行う

贈与財産をもらった人がその財産を自分のものとして管理し、自由に使える状態でなければ贈与したことになりません。したがって、通帳や印鑑は、贈与した人ではなく贈与を受けた人が保管・管理するのが当然です。贈与者自身が引き出したり解約できるような状態では、贈与者の預金(子などの名義を使った名義預金)として判定されます。

注意点(3) お金の贈与は振込で行う

贈与した事実が、通帳等で確認できるようにしておくことが重要です。

贈与額が年間110万円を超えた場合は贈与税の申告をする

金銭を暦年贈与した場合、贈与税は、その年中に贈与した金額から基礎控除額を差し引いた金額に課税されます。

1年間に贈与した金額が110万円以下であれば贈与税はかからず申告する必要はありませんが、110万円を超えた場合は贈与税の申告が必要になります。

課税価格

その年中の贈与金額‐基礎控除額(110万円)

相続税の調査時等において贈与税の調査も行われ、申告がないと贈与税等が課税されるとともに無申告加算税が課されることになります。

平成27年分の贈与税申告書の受付期間

平成27年1月から同年12月までに受けた贈与に対する贈与税の申告書の受付期間は、
平成28年2月1日かう3月15日までです。

110万円以下でも課税されるケースに注意!

前述のように贈与を受けた額が年間110万円以下だと贈与税の申告は必要ありません。
ただし、例えば10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることを贈与者と約束している場合、約束した年において10年間に毎年100万円ずつ給付を受ける権利の贈与があったものとして贈与税がかかるので申告が必要になります。

贈与税の申告漏れ等が8割以上

国税庁「平成26事務年度における相続税の調査状況について」の贈与税に係る調査事績によると、贈与税の申告漏れ等の非違件数のうち無申告が85.4%と8割を超える結果となっています。

「申告漏れ等の非違件数」の状況

(図表1)「申告漏れ等の非違件数」の状況

なお「実地調査件数」と「申告漏れ等の非違件数」については以下のとおりです。

  • 実地調査件数 3,949件 (対前事務年度比104.3%)
  • 申告漏れ等の非違件数 3,616件 (対前事務年度比105.6%)

国税庁は、相続税調査時などあらゆる機会を通して財産移転の把握に努め、無申告事案を中心に積極的に贈与税の調査を実施するようです。

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