よろず相談所 税理士法人 L&Cアシスト
平成29年4月1日からの消費税率10%への引上げが行われた場合、軽減税率が導入されると複数税率になります。インボイス方式の導入も予定されており、仕人税額控除の要件も厳格化されます。これに対応するためにも、現在の記帳に不備がないか、再確認しておきましょう。
消費税の仕入税額控除を受けるには、「課税仕入等に係る帳簿及び請求書等の保存が必要」です。それらが保存されていない場合、仕入税額控除は受けられないことになっています。
さらに、帳簿などを保存していても法定記載事項をすべて記載していないと仕入税額控除が受けられません。
A社は、現金出納帳及び仕入帳に課税仕入れの相手方の氏名または名称、仕入れた資産等の内容について、そのいずれかの記載しかなく、その課税仕入れが本当に行われたのかどうかを確認できる程度の具体的な記載がなかった。A社は、税務調査の初日においてその帳簿書類を提示したのみで、その後も帳簿及び請求書等の提示が一切なかった。結局、帳簿の記載要件を満たしていないとして仕入税額控除は認められなかった。
(国税不服審判所裁決)
仕入税額控除が認められないと、納める消費税が増加します。さらに税務調査でそうした指摘がなされ、過去にさかのぼって更正となると、加算税や延滞税が課される事態にもなりかねません。
仕入税額控除を受けるためには、次の4点の記載が必須要件となっています。
原則的にはフルネームでの記載となります。例えば、法人であれば「株式会社鈴木商店」などと記載します。
※正式名称及びそれらの略称が記載された取引先名簿で相手先が特定できる場合は、「鈴木商店」などのような記載でも差し支えありません。
商品の引渡しを受けた日になります。相手先がサービス業の場合は、その役務を受けた日となります。水道光熱費や電話料金などの一定の使用料については、「○年△月分」といった記載でよいとされています。
取引内容(商品名等)を記載します。商品の一般的な総称でまとめて記載するなど、仕入税額控除額を計算できる程度の記載でも差し支えありません。
消費税込みの金額になります。
仕入税額控除を受けるための記帳のポイントは下記のとおりです。
請求書等の記載事項は次のとおりです。
もし不備があれば再発行してもらいましょう。
課税商品と非課税商品、不課税商品がある場合は区分して記帳します。
消費税にかかわらず、記帳は速やかに行いましょう。記帳が遅れると間違いや漏れが発生する可能性が高くなります。日々、きちんと記帳された会計帳簿をもとに作成された決算書や税務申告書は信用が増します。
平成29年4月に予定されている消費税率の引上げと軽減税率の導入に伴い、前述の帳簿の記載事項4項目に加えて「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」の記載が必要になります。さらに平成33年4月から、現行の請求書等を保存する方式に代えてインボイス方式(適格請求書等保存方式)の導入が予定されています。インボイス方式導入に伴い以下のようなことが考えられます。
インボイス方式の導入で事務負担が軽減されるかのような印象がありますが、仕入税額控除の要件が厳格化され、より適正な事務処理が求められます。その対応に備えましょう。